最高裁判所第一小法廷 昭和40年(オ)163号 判決 1966年1月27日
上告人
松本四郎
右訴訟代理人
田中和
被上告人
手島絢子
右訴訟代理人
磯崎良誉
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告理代人田中和の上告理由について。
土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなくその賃借地を他に転貸した場合においても、賃借人の右行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法六一二条二項による解除権を行使し得ないのであつて、そのことは、所論のとおりである。しかしながら、かかる特段の事情の存在は土地の賃借人において主張、立証すべきものと解するを相当とするから、本件において土地の賃借人たる上告人が右事情について何等の主張、立証をなしたことが認められない以上、原審がこの点について釈明権を行使しなかつたとしても、原判決に所論の違法は認められない。それ故、論旨は採用に値しない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、九八条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(松田二郎 入江俊郎 長部謹吾 岩田誠)